小幡敏の日記

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白鵬さん、もったいない

僕は相撲が好きだから白鵬ことは幕内にあがって以降は人並みには見てきた。

 

今更改まって言うことではないのかもしれないが、僕はこの力士を好かない。

 

日本人の心がどうのというつもりはない。が、彼のふてぶてしい態度や物言い、それでいて双葉山がどうのと口走り、それもいつのまにか言わなくなるような白々しさ、そういうものを目にし、耳にしていれば好きなものも嫌いになる。

 

なにより、朝青龍の向こうを張っていたころに見せていた堂々たる取り口はどこへいった。

 

あのまま白鵬が一定の分別を保っていれば、たとえ通算成績で今に劣るといえども、それでも他に絶した偉大な記録を残し、だれの頭にも歴史上類を見ない大横綱として記憶されたはずだった。

 

そもそも相撲取りはスポーツ選手以上の存在だ。どんな能力も思いのままになり、何にでもなれるのであれば、僕は偉大な力士になりたかった。それは、力士というものが、道徳的な鍛錬を社会へ波及しうるほとんど唯一といってよい存在だからである。僕は僕の修養を社会全体の向上へと一致させうる力士にでもなりたかった。

 

それはともかく、白鵬が仮に「おとなしく」していたらどうなったろうか。物足りないだのいい子ちゃんだの言われてやはり不人気であったろうか。

 

それはそうかもしれぬ。が、それでもよいではないか。白鵬にはそうしてもらいたかった。それで日本人の身勝手、日本人の偏狭を笑ってやればよい。彼はその資格を有する実力者であった。

 

せっかく日本人の鼻をあかせたというのに、白鵬、それではあなたは日本人を前に出稼ぎレスラーでしかない。

 

強き人よ、日本人をして戦慄せしめよ。

 

もったいない。白鵬はもっとできたはずだ。日本人を反省させてやればよかったのだ。それも日本人の一人である僕の勝手な願いかもしれぬが、今の白鵬の不人気と妙な偽善的支持の醜さを思えば、彼にとってもその方がよかったといってよいのではなかろうか。かじろう。