小幡敏の日記

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世話の焼ける自衛官の典型

hontoに下記意見が載っていました。

 

東大文学部卒業で自衛官OBという珍しい経歴が目を引き、購入して読んだ。若いながら良く本を読み文章もわかりやすい。ただ、論旨にはついて行けない。憲法改正して軍隊を保持すべきという基本的思想でありながら、今の自衛隊は真に戦う組織でなく、幹部の中核をなす防大出身者はどれもこれもお話にならない連中ばかりで、能力資質は劣りながらプライドだけは高くて始末が悪いとこき下ろす。だから早く軍隊にしてもっと優秀な人材を集めるべしという。四年間の自衛隊勤務で自衛隊の何が分かったのだろう。軍隊とはどういう意味合いでどんな組織であるべきかは一向に出てこない。彼のいう軍隊はどんな軍隊なのか? 米軍、中国軍、韓国軍、北朝鮮軍、ロシア軍、イギリス軍などなどどれを理想とする軍隊なのかは一向に論じない。今の自衛隊の人材がお粗末ならば、いつまで待っても憲法改正にはつながらないだろう。理想論と現実論が交差し、若者らしい理想論を追求して現実につなげるステップが欲しい。もう少し長く自衛隊に勤務し、自衛隊の本質を内部からしっかり見て欲しかったと思う。そういう意味では惜しい人材ではある。三島由紀夫のいう防衛論とは本質的に異なっていると思う。かく言う私は今年82歳になる防大卒の自衛官OBである。

 

 

あまり言うと下品になりますからよしますが、これくらいが平均的自衛官の反応だとすると消沈します。いったいこの方は本当に読んでくれたのでしょうか…読んでいないと信じたいですが、読んだのでしょう。僕にも敬老精神はありますから悪し様に言うのは気が引けますが、有り体に言えば、82才にもなってこのような強がりしか言えないのであれば、僕はそういう人を尊敬はしない。

 

はっきり申せば防大生など斬るにも及ばん。こき下ろすもなにも、そんなものは主題になるほどの資格はないのだから、そんな些事に反応されても困惑してしまいます。それに、軍隊にして優秀な人材を集めろなど、僕は言った覚えはありません。今の地位じゃ流れ者しか集まらんのは困ったもんだと、そういったまでだ。僕は自衛隊を軍隊にしたら優秀な人士が集まると期待するほどお気楽な頭はしていないつもりだ。それに、もしご不満なら、四年で何が分かるかなどと強がっていないで、『防大出身者はどれもこれもお話にならない連中ばかりで、能力資質は劣りながらプライドだけは高くて始末が悪い、などというのは言いがかりだ、そんなことはない』と言ってみたらどうか。いや、是非いってもらいたいものだが、彼が老体の内にも僅かな良心を住まわせているならそうは言えないはずだ。事実防大生の体たらくなど論をまたず、防衛大学出身者自ら認めるところなのだから(そうはいっても僕は彼らをいたずらに貶めたいのではない。彼らが国防を担う青年とならねばならない、そういう気で言っていることくらい何故分からないのか)。

 

そして、なぜ各国軍のなかから理想の軍隊を提出しなければならないのかもわからないが、僕は自衛隊が単に軍隊の体を為していないと言っているのであり、それは私のまわりのほぼ全ての現役自衛官も認めるところです(勿論防大OBも含む)。

 

勤務が短いと言うが、ではその無駄に長い勤務からやっと引き出し得た自衛隊の本質、否、真髄とは何か。是非とも伺いたいところだ。僕は会う人会う人自衛隊の欺瞞や欠陥を糾弾したが、どんな年配者も、どんな高官も、正面から僕の問いに答えた者はなかった。勤務の長さで学ぶものが仮にあるのであれば、何故彼らは僕にそれを説かなかったのか。

 

三島の防衛論云々と唐突に脈絡なく言い出すあたりはさもありなんだが、はっきり申せば防衛大卒の高官たちの無為無能の果てに今の自衛隊はある。厳しい政治環境という言い訳に隠れ、誰一人として腹を切らなかった防衛大卒業生の一員に、僕はなんのためらいもなく、貴様らよりは十全に自衛隊人生を過ごしたと言い得る。彼らの四十年に手の掛かる自衛官人生など、僕は積み木崩しの徒労としか思わぬ。自衛官、幹部自衛官のいったい誰が戦友足り得たか、いったい幾人がともに夢を語り得たか。あんな不毛の砂漠に十年二十年と居ていったい何になる。ひとりとして俺に夢を語りかけなかった自衛隊という組織に、俺をいったいどれだけ付き合わせれば満足なんだ。人を腐す前にまず人は皆同じ生き物ではないことを知れ。

 

加えて、『軍隊とはどういう意味合いでどんな組織であるべきかは一向に出てこない』というが、僕はそれを書いたつもりだ。不十分だ、お粗末だというのならともかく、一向に出てこないというのはもはや批判としても受け取れぬ。

 

何より、自衛隊に、いや、防衛大学にだって良かれと思って言っていることに対し、なぜこのように自らに向けられたら非難と考えるのかわからん。それはやはり後ろめたさから来るのですかと、そういう嫌みの一つも言いたくなる。

 

少なくとも、人に勝手に惜しがられるのは大変に不満だ。一体何様のつもりなのだ、この老人は。いっておくが、おぬしは加害者だぞ、俺が辞めさせられたのは、おぬしらのせいではないか。どの面下げて惜しがっとるんだ。

 

僕の意見を批判するのはいい、だが、それ相応の強度で向かってきてもらわねば困る。身内の自衛官ならなおさらだ。

 

いや、下品になってしまいました。しかし、僕は日本人よりも自衛官のために働いているつもりなのです。その(元)自衛官からヤジがでると、必要以上に腹が立ってしまう。

あんさんの為にやってるんだぞ、そういう気分にどうしてもなるんですな。