小幡敏の日記

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愛校心の話

先日現役の自衛官(二等陸佐)と話していて、防衛大生は何故愛校心がないのかと問われました。

 

僕は、

 

それは日本人に愛国心がないのと同じ構造なのではないか。米国によって庇護された特殊空間の中では自己を競争者との関係で相対化する契機自体奪われるように、国防の目的なくただ隔絶された横須賀の学校に飼われては、本来軍民関係の中で見いだすはずの自分たちの像が描けない。それゆえ、愛校心に向かうだけの自己の輪郭さえもっていないのだろう。それは他国の士官学校も向こうに持たないのだから当然である。

 

と答えました。そしてそれは、彼等が同好会(部活)にはやたらと拘ることとも矛盾しません。

 

それで少し思いましたが、まったく、防衛大まで出て愛校心を持てないというのは余りにも手落ちな話じゃないか。私などでも、麻布に愛校心はあります(東大は無いのであまり人のことは言えませんが)。

 

私が麻布に入りたいと思ったのは、色々ありますが、やはり開成は嫌だなというのもあった。当時の私はさほどお勉強もできませんでしたからそもそも入れなかった疑惑が濃厚かもしれませんが、生意気を言えば、周りをみるにつけ、こういうやつらが行く学校は嫌だと思った。

 

 

それに、あの手の機関は日本の貧乏くさい平目小才を集めて人間の屑ばかりつくるところだと思っていたからです。

その点麻布はゴミのような人間ばかりつくりますが、人間のゴミはつくらない。してみれば、なんと良い学校じゃないか。

 

大学も同じです。東大法学部なんて、これは学力的にも行けましたが、開成など話にならんくらいの人間の屑養成機関に成り下がっておりますから、行きたくない。(あくまで傾向の話で、そらまともなやつも中にはあります。もっといえば、彼らは他の日本人に比べて取り立てて悪い人間ではありません。凡庸な日本人がなまじ勉強ができたらどうなるかというだけで、そこらの日本人と全く変わりがない。彼らのことを悪し様に言う者が多いですが、そういうご当人だって東大に行ければ同じように考え、同じように振る舞うくずになるのは目に見えています。つまりは、現代日本人に問題があるのであって、東大法学部に罪があるわけではありません。)

 

それなら文学部でゴミになるかと思ったら、そうでもない、法学部ほどじゃあないが、人間の屑の掃き溜めには違いありませんでした。法学部に行けないやつも混じってますから、出来の悪い屑みたいなもんで、なお悪いかも知らん。

 

今思えば、防衛大に行って頭抱えていたほうがよかったのかもしれませんが、これはもう後の祭りですから、言っても栓のない話です。

 

ちなみに、世間から進学校とされるところはさぞかしレベルの高い授業で、皆競争させられ、どうのこうのと言われますが、それは準進学校の話で、開成も麻布も、なんなら私の家内の居た桜蔭も、そんなことはまるでありません。(それに金持ち子弟云々というのもあたらず、貧乏しながらくる者もあります。たしかに極貧の中からくる者はありませんが、一般に「金持ちが…」と言っている人らくらいのところからは普通に進学してくるものです)

 

今はどうだかしらないですが、私の時は授業は随分気ままなものだったし(聞かない連中がほとんど)、進学指導なんて受けた記憶がなく、受験が終わってから、どこ行くの?と担任に聞かれ、文3ですと言い、あらそう頑張って、他は受けたの?、いえ、それだけです、ああそう、とりあえずおめでとう、と、それだけです。今思えば素晴らしい学校でした。当時はその有り難さを理解していなかった。

 

それと、これは憎まれ口になってしまいますが、私に対して、「東大法学部を出たようなエリートは庶民のことがわからんから」云々とお説教をたれてくる人が多いので明確に言っておきたい。

私もそら東大法学部だからどうしたと思うわけではありませんが、東大法学部だからダメだとかなんとかかんとか、それにもまた与しません。てめえが一番学歴にこだわっているじゃねえかとしか思えない。

 

少なくともこの現代日本で、半分近くの人が大学に行っている。それにもかかわらず、いや、行けるものなら行ったろうに、なぜそうみっともないことを言うのかなと思う。ミスコンに出てはじかれた女が、人は容姿じゃない!とうそぶくようなことをするものではありません。

 

何しろ、こういう言い方は憎まれますが、受験勉強なんて単純な記号処理みたいなもんですから、その土俵に立ちながら全然取り組みにもなりませんでしたという人、そういう人を僕は悪人だとか無価値だとかいう気は毛頭ありませんが、政治をやらせたり、指導的立場につかせるにはだいぶ不安を覚えます。有り体にいえば、人を指導する立場になりたいなら受験勉強くらいなんとかするのが筋だろうと思うからです。

 

というとまぁ、てめえに言われると腹が立つと、なんて高飛車なんだと思われるかもしれませんが、私はそれを必須とはいいません。ですから、大学受験をしておきながら、人は学歴じゃないだなんだとくさくさしている者より、小学校しか出ていなかろうが、いや、小学校すら出ていない文盲だろうが、立派な者なら立派だと、そう思いますし、田中角栄のような天才が人の上に立ったとしても、何も不満はありません。

 

くだらないことをくどくど言ってしまいましたが、親ガチャだの上級国民だの、日本人の物言いがあまりに落ちぶれてしまったものですから、つまらんことをいいつらねました。

 

つまるところ、学歴などつまらんものかもしれないが、つまらんことに付き合うくらいならちゃんとやれ、やらんならやらんでも一向構わんが、いずれにしても、立派な人間になりたい、そういう心掛けがないやつが上を見て腐したり、下を見て蔑んだり、そういうちんけなことは男らしくないからおよしなさいと、そういうことです。

 

それでも僕が高みの見物しているだけだと言うなら、こういう話はどうか。

 

つい先週、高架下でうずくまっているルンペンが居て、僕は彼が雨になるとそこにきてどんなに寒い日もついたて無しで凍えているもんだから気にかかっていた。何度か行きつ戻りつしたが、それは、哀れんでもらったんじゃ面白くないと思われるのを心配したからだ。

 

意を決しておっちゃん大丈夫かと話しかけると、案外に元気な声で「へぇ」と返し、すっくと立ち上がって応対してくれた。

 

そのおっさんは72才で、元土建業、親に死なれて住む家が無くなったとき、アパートを探したが手違いから空白期間ができた。それで少しの間ならと野宿していたところ、案外に気分がよく、彼曰わく、「のめり込んでしまったんです」。

 

そいで色々立ち話をしていたが、彼もなかなか難儀していて、雨の日など雨宿りしていると通報して追い払おうとするものがあるらしい。私が「そんな薄情なやつもあるんですな」というと、「いえ、私なんかは人間の面汚しみたいなもので、世間様とは違う生き方をしていますから、目障りなのも仕方ないと思うんです。ですから私は出来る限り迷惑をかけることのないよう、あまり目に付かないところで、それも長くは居ないようにしています、その代わり、私のことも放っておいてほしいと、それくらいのわがままは言うんですけどね」と答えた。

 

なんとまあ立派なもんだと、私は弱輩ながらに感心しましたよ。そらルンペンが皆彼のように礼儀正しく気丈だとは言わぬが、僕は彼に関して、街を歩く大抵の日本人紳士淑女よりよほど立派な人間だと思いました。

 

日本の紳士淑女諸君、特に親ガチャ上級国民論者には是非ともあのルンペン氏の垢を煎じて飲んでもらいたいものです。なんせ垢だけはルンペン一流に蓄えておりましたからね。