頭山満が中江について次のように語ったという。
いつも貧乏で困っていたが、実に天真爛漫なものじゃった。ある時竹内正志が俺の内に遊びに来ていた時に、ちょうど中江も来あわせた。竹内が、「中江さん、意外の御無沙汰をしておりますが、いずれ近日御伺いしようと思うております」というた。すると中江が「ナニ、貴様に俺は用はない、来るには及ばん」と、愛想もコソもない返答で、竹内も閉口したことじゃった。
ここだけから推しても、中江兆民は信ずるに足る人物ではないか。こういうことを言われてしまうと、私は弱い。惚れ込んでしまう。