小幡敏の日記

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富士見と月見

私は昔から食べることが好きな方で、放っておけば一食に一合や二合の飯は食べてしまう。

だから中学にあがる前までは肥満していたし、今に至るまで痩せていたことはない。

 

それに随分偏食で、大学にあがるまで野菜をほとんど食べたことがなかった。

 

そういうこともあってか、体質のほうもいかれてしまって、やたらと肥りやすい。

 

今だって、少し気を抜けばみるまに太り出す。それではあんまりみっともないから週に二、三度そこいらをふらふらと駆けているが、昨晩走っていたところ、ちょうど夕暮れ時で、多摩川にかかる橋の向こうに富士山が綺麗に望めた。

 

あんまり綺麗なものだから、これに目を留めた者は多くいたようで、そこここで人が立ち止まっている。

 

だが、その全員といってよいほどの人が、皆あのスマートフォンのカメラを向けているではないか。

 

胸くそ悪さをこらえてなおも数キロ上流に向かって走ると、蝙蝠が飛び始め、夕焼け空も地平に僅かな赤を残して落ち着いてきた。

 

もうよいかと思って踵を返して走り出すと、今度は東側にぽっかり山吹色の大きな月が浮かんでいる。

 

これまたなかなか見事なものだが、今度はスマートフォンがそちらを向いて立っておった。

 

おいおい、あんたらそれしかやることがないのか。ちょっと腰を下ろして眺めるくらいのことをしても罰は当たるまいに。

 

全く、西を向いても東を見てもなんとやらというのはこういうことですかい。

 

ちひろ