小幡敏の日記

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北國の友

昨日まで三泊四日で北海道におりました。

自衛官を辞めて林業兼猟師になった友のところに厄介になり、久し振りに愉快な時間を過ごすことができました。

彼は『このまま自衛官を続け、全てをこの国と自衛隊に捧げる覚悟がなかったんだな』と言っておりましたが、それは彼の謙虚で誠実な性格が言わせたのであり、長く寝食を伴にした私に言わせれば、彼は勇気と忍耐と忠誠心に富んだ男です。むしろこの国が彼を軍人にしておかなかったというべきでしょう。

彼もまた、『おれは軍人になりたかった。自衛隊や1等陸尉なんて、そんなものに満足はできやしなかった』と言っておりました。

 

自衛官のみんながみんなそのように考えているとは言いませんが、一人の誠実な男が無念の内に自衛隊を去ったということはここに報告しておきます。彼は、優れた軍人になる資格があった。それが日本の現実を前に敗退していったのであります。

 

その彼と鹿を追って山を歩き、北海道の大自然の中を四駆で駆け回るのはなんとも幸福でありながら、一抹の寂しさがついて回ったことは否定できません。私たちにとって、自衛隊を辞めて得られた自由は無上の解放感をもたらすものですが、彼もまた言うように、『こんなにも自由で幸福であるのにどこかで満たされぬのは自衛隊の呪いだろう。平坦で快適な日常は、我らにとっては退屈と焦燥の温床に過ぎん』ということなのであります。

 

自衛隊の近況を聞くに、状況は絶望的ですが、いったいどれだけの人間がこれを理解しているのか、それを思うと頭が痛くなってきます。自衛官とて、はっきり問題としている者はないのではないか。予算を増額するように、自衛隊のここをああしてこうやれば状況がよくなるとでも合点しているのではないか。そうだとすれば、いよいよ状況は絶望的であるという他ありません。

 

なにはともあれ、我が良き友よ、北の大地での成功を祈る。


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