小幡敏の日記

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ロシアは悪玉か

私は元来ロスケが嫌いだからロシアの肩を持つ気などさらさらない。

 

が、この国の人のウクライナ善玉、ロシア悪玉という見立ては単なる判官贔屓とも思えない。

 

単刀直入に言えば、その背後に我々の願望や諸々の道徳感情が見え隠れするのが気に入らないのだ。

 

前にも述べたが、ウクライナと日本を重ね、日本の長久を願う裏返しでウクライナをご贔屓にするのは随分みっともない。力道山が外人レスラーをやっつけたって、米軍を追い出してくれるわけではないのと同じだ。

 

強いのは力道山であって我々ではない。にもかかわらず、力道山はあそこではああすべきだった、こうやればよかったと見物がいろいろと言っているのは、プロレス興行なら許されようが、ウクライナ人に日本人が敢闘を願ったり、降伏を勧めたりする資格があるわけがない。我々は国のために戦うことからもっとも遠い存在なのだから、赤ん坊が老人に死に様を説くようなことは慎むことだ。

 

そして何より腹立たしいのは、我が日本人がしばしば、ロシアのプーチンや権力者を悪玉視し、ロシア国民を免罪したがることだ。私は戦争に善悪など軽々に持ち込むなと常々思っているから、ロシアが悪いか、ロシア人が悪いかなどに興味はないが、皆が問題にするのだから仕方あるまい、一応意見を述べるが、ではプーチンに寄せられるロシア国民の高い支持はどうなるのだ。あれは世論操作の結果か。ロシア人はSNSの神通力も届かぬ存在で、我々目覚めた西側諸国よりも蒙昧だと言うのか。それもまた、ロシアの愚民政策の賜物か。それに比して、日本人は情報を正しく摂取判断して、神のごとき透徹した目でプーチンとゼレンスキーとを裁き、ゼレンスキーにお印を施したというのか。

 

馬鹿いえ。またその戦法か。困ったら「国民は騙されていた」だ。だとしたら国民などすぐに騙される頼りにならぬものだと、こうなりませんかね。いやはや、国民というのは普段最高権力者にあって好き勝手にその権勢を誇り、過てる判断は全て「騙された」の一言ですませるのであるから、こんな気楽な商売はあるまい。独裁者なら吊されてるところだが、国民様は吊す方専門ということだ、全く羨ましい限り。

 

攻め込んだロシアが悪い、などというのは、子どもに「先に手を出した方が悪い」などという親の下手な裁定と変わらぬ。そんなことで善悪が決まるものか。だいたいが、その土地の歴史もしらぬ、地理も知らぬ、宗教も文化も何も知らない我々が親みたいな顔をしてのこのこ出て行く場面じゃないことくらいわかってはくれぬか。

 

私は日本政府に言っているんじゃない、日本国民に言ってるんだ。この戦争で存在しているのは、「攻め込まれたら困り、追い返さねばならないウクライナ」と「攻め込んだ以上どうにか戦果をあげねばならないロシア」、そして「戦争後に自らの環境を少しでも有利にしたい諸外国」の三者だけだ。日本はもちろん最後の者に含まれるわけだが、「可哀想なウクライナを応援してロシアを悪玉視」する者はいったいどこに属するのか。旗印ははっきりさせておかねば疑念を招く。西軍につくのはわかったが、そうであるなら壁訴訟に精を出していないで、もっと日本の国益というものに目を向けたらどうか。そうでないかぎり、我々日本人の公民化など決して果たされない。