小幡敏の日記

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淫売自衛官

私の自衛官時代の同期にムツゴロウ先生の遠縁だかで、”浪速のダニ”なる異名を持つ男がいる。こいつはさすがムツゴロウ一族だけあって、猫を妻にしている変わり者だが、彼もこの度自衛隊でどうにもやりきれんということで転職活動を始めたというではないか。

 

聞けば、面接で通り一遍の自衛隊での憤懣、すなわち「見捨てられ、認められず、報われない自衛隊の悲哀」を述べたそうだが、面接官のそれに応ずるに、「でも災害派遣なんかでは自衛隊はとても感謝されているのを感じるんじゃないですか」とのことである。

 

こういうことを平気でのたまう輩が実に多い。これについては次の連載原稿にも少し書いたが、やはり「自衛隊災害派遣」という日本人の短絡思考自体を改めて指弾せずにはいられない。

 

これについては色々説明の仕方というものを考えてみたが、やはり無遠慮になっても、あけすけに言わなければ彼ら彼女らの眼はさめまいと思うので言わせてもらう。なぜなら、この面接官とて自衛隊に極めて好意的な人間であったのだから。

 

では、本題。

 

自衛官とは一体如何なる立場に置かれているのか。世間のもっとも類似せる者はだれか。それはすなわち、淫売なのである。

 

淫売というのは売春婦であるから、これはその身体を売って生業と成す。そして、これを買う者がいるから当然に成り立っている。しかしながら、こんなものはなければない方が良いのであって、それは常に社会における最も弱く汚い存在となる。

 

だがしかし、これを買う者というのは案外に彼女らに優しくするものだ。人にもよるが、それが彼にとっても利益となるのだから。時として彼らは感謝さえするだろう。

ところが、彼らにとって用が済めば彼女たちは所詮淫売に過ぎぬ。恋人や女房には通常相応しくないと考え、それは世間の「職業に貴賎なし」ムードがいくら高まろうが、彼ら彼女らの偽善の最大の抵抗拠点として厳然存在しているではないか。淫売に世話になったり、或いは淫売に身を落とす心配があるものでなければないほど淫売を見下すのは、如何にも偽善的道徳が支配する我が国の国民らしい現象ではないか。

 

そして、自衛官とはまさしくこの淫売にすぎぬ。災害を劣情に置き換えればお分かりだろう。国民は災害に見舞われれば自衛官を頼りにし、感謝しさえする。だがそれが済めばどうか。淫売が十全な女として見られぬように、自衛官は軍人としてみてもらうことはできぬ。次の災害まで目障りだから消えていてくれと思われるのが関の山ではないか。

 

ああそうだ、あれを忘れていた。淫売とて人間、こんな仕打ちに腹も立てば、恨みもするだろう。だが彼女らには女衒がいる。女衒は彼女らと客と、そのどちらにもいい顔をし、時に彼女らを縛り、叱責することこそあれ、宥めすかして淫売から足を洗わせない。

 

自衛官にとっての女衒とはだれか、それは高級幹部であり、政治家であり、或いはメディアである。彼らは機を見て自衛官をほめる。男が淫売にも戯れに甘言をかけるように。淫売も年季の浅い者や苦労人、或いは少し足りない者などはこれにまどわされることもあるだろう。自衛官も同じである。彼らは純真であればあるほど、こうした囁きに我が身の命まで差し出してしまうのだ。哀れ、そこに誠の信頼は存在しない。

 

改めて言えば、私は淫売を見下してなどいない。いや、自衛官を愛するのと全く同様に彼女らに同情さえする。私は女は買わないが、それは何より、彼女らに取り付く男を汚らしく思うからである。そしてまた同様に、私は自衛官に取り付く国民一同を汚らしく思っている。

 

然るに、淫売がいかに哀れであっても、それは社会の悪であって病ではない。だが軍人が淫売の心境ないし地位にあればどうか。これは悪ではなく明確に病であると言わざるを得まい。

 

昨今では女衒や悪漢どもが跋扈しておって、これが自衛官と交わることも多い。このことが招くのは正しく性病の如き、曖昧な自衛隊肯定・自衛隊支持の蔓延である。

 

今ではこれにかかっている自衛官も多い。自衛隊の教育や交流事業など、スピロヘータの種株を接種させているようなものだ。

 

自衛隊災害派遣の時ばかり”感謝”している国民に言おう、諸君のやっていることは淫売を軽侮しつつ買っている醜男と変わらぬ。

 

自衛隊は軍事組織である。泥かきやがれき撤去など、任務と呼べたものではない。

敵があれば民間地に砲撃もしなければならない、庇護を求めても作戦戦闘に差し支えるのであれば見殺しにすることもあろう。それが軍隊の務めだからだ。

 

それでもなお自衛隊頑張れ、自衛隊有難う、そう言えるのか。

国民にはそこまで踏み込んで物を言ってもらわねば困る。

そうであれば憲法改正など、議論の余地さえないではないか。

自衛官を淫売のままにしているのはよろしくない、そういうのであれば、憲法など明日にでも変えなければならぬ。

 

重ねて言う、間違っても現時の自衛隊にお為ごかしの支持などしてくれるな。

そんなことをしても解決にはならないどころか、問題の隠蔽と保存を招来する。

日本人の耐えがたい事大主義にはもううんざりだ。

問題を見よ、問題の解決を考えよ、それをしないのであれば、奴隷にでもなればいい。

 

だが私はそんなことは願い下げである。

自衛隊をまともな国軍にする、それだけは何があっても譲るつもりはない。